マルタ共和国とアフリカ移民問題
マルタ共和国と聞いてどんなことが思い浮びますか?
- エメラルドグリーンの地中海とビーチ
- 年中温暖な気候
- マルタ騎士団の歴史
- 世界遺産のバレッタ
- 猫がいっぱい!!
観光局が世界に発信するマルタのイメージはとても魅力的です。確かにマルタの素晴らしさは色々ありますが、国外ではほとんど知られていない深刻な問題もあります。その一つは、アフリカ人の移民問題です。
シリアやイラクなどをはじめとするアフリカや中東の情勢悪化に比例して、ヨーロッパへ亡命する人々が後を絶ちません。前年比からは減少したようですが、2017年のEU国への亡命申請者数は合計65万人でした。マルタにはシリア人やイラク人の申請者が多いようです。
亡命には様々なルートがありますが、そのひとつが、リビアから約500kmに位置するマルタへボートで渡ることです。北アフリカには乗船を手配する斡旋業者がおり、手続きのために高額の費用を要求します。亡命者で多いのは、子供を連れた母親や働き盛りの20代男性など、若い年代の人たちです。
船中のコンディションはずさんです。座るスペースもないぐらいに押し込まれ、事故が起きた場合の緊急避難道具も完備されていません。沈没する船もあれば水分不足が原因で死亡する子供たちもいます。地中海で溺死、もしくは行方不明になった人々もいます。
地中海ルートで彼らが目指す国は、大抵はイタリア(ランペデューサ島)かマルタですが、マルタ海沖に流れ着いた場合は、マルタのレスキュー隊が対応します。救助についてマルタとイタリアの間で議論となり、その結果対応が遅れてしまい船が沈没したケースもあります。
無事マルタに上陸した亡命者は、入国審査の期間中をマルタ南に位置するHal-Far 保護施設で過ごします。滞在期間は人それぞれで、短くて数ヶ月、長ければ数年間も滞在させられるそうです。書類審査や面接の後、運が良ければドイツやスイスなどのヨーロッパ国やアメリカ、亡命者と見なされなかった場合はアフリカの母国へ強制送還されます。
(@darrinzl, Darrin Zammit-Lupi)
(@darrinzl, Darrin Zammit-Lupi)
マルタへの移住を希望するアフリカ人もいますが、アフリカ移民にとってマルタでの雇用のチャンスは少なく、仕事があっても、低賃金の日雇い労働や清掃員、条件の悪い工事現場でのアシスタント等をしている人が大半です。
アフリカ人に対する差別的意識も根強い傾向があります。例えば、知り合ったマルタ人から「アフリカ人が多くなって、治安が悪くなった」とか、「マルタはただでさえ小さい国なのに、アフリカ人が押し寄せてきて困る」というような差別的発言を聞くことがよくあります。難民の援助活動もごく一部に限られています。
EUの恩恵を受けているマルタは、EUの一員として守るべき責任もあるはずです。物理的な問題はもちろん考慮されるべきですが、ヨーロッパ人として人道的配慮に欠けるような移民政策や活動は、徹底的に議論されるべきだと思います。
生死をかけてヨーロッパへ亡命するアフリカや中東の人々にとって、地中海やマルタはどんな風に見えるのでしょうか。
コメント
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2018年 3月 24日
それは差別じゃないのでは?
人口40万人の国がアフリカから移民受け入れてたら
すぐに滅ぶやん
エウレカ様、コメントありがとうございます!
難民問題は、ヨーロッパ全体の大きな課題です。私は現在ベルリンに住んでいますが、家の近くに大きな移民センターがあるので、そこに住んでいる人たちをよく見かけます。
マルタの移民問題についてですが、私は、難民をマルタ移民として受け入れることと、日常生活において亡命者を差別することは、別問題だと考えています。私はマルタに6年間滞在しましたが、アフリカ人に対して差別意識があるなと感じさせられる体験をいろいろしました。また、レスキューされた移民の大半はマルタに止まらず、ドイツやイタリアへ移動しています。「マルタは人口が多くて国土が狭いから、難民を受け入れるのは無理だ」とマルタ人はよく言い訳をしますが、皮肉なことに、マルタでは1件あたり650,000ユーロするパスポートを販売をして「マルタ国民」を増やす行為を行っています。