日本語には訳せないドイツの言葉 “Gemütlichkeit”

マルタ共和国からベルリンに移住したのは今年の一月始め。しばらく不安定な天候が続いていましたが、桜が完全に散った頃位からやっと春らしい天気に恵まれています。

天気がよい日は、みんな仕事もそっちのけで「ビタミンD」を補給しに屋外へ出かけます。サボってるわけではありません。ベルリンの冬は暗くて長いので、日光を浴びることは精神的にも健康のためにも大切な作業なのです。

日光浴を行う人気スポットは市内の至る所にある公園です。私はベルリンで一番標高が高いビクトリアパークの近所に住んでいますが、散歩に行くと実にいろんな人たちを見かけます。

デート中のカップル、ペットや子供連れの家族、ベンチに座って一人読書に耽っている人。

ビール瓶をラッパ飲みしながら芝生でピクニックをするグループ。ヨガやサルサダンスをしている人たち。ジョギングやサイクリングをする人。

曲を披露しているバンドとその観衆。それを横目で見ながらそそくさと通り過ぎるビジネスマン。

ベルリンでの一般的な休日の過ごし方は、いたってシンプルです。ここにはテーマパークもありませんし、日曜日はデパートすら閉まっています。計画を立てて大それたことをするわけではありません。例えば、天気が良ければ公園でピクニック、サンデーマーケットで古着や古本を探したり、ビアガーデンで冷えた生ビールと焼きたてのプレッツェルを楽しむくらいのレベルです。ブランチをするにもお茶するにもたっぷり時間をかけます。とても些細なことですが、私はこういうゆったりした時間の使い方に「ほどよい幸せ」を感じ、それを周辺の人たちと共有している感覚を持ちます。

最近Gemütlichkeit(ゲミュートリッヒカイト)というドイツの言葉を知りました。英語にも日本語にもうまく当てはまる表現がないのですが、ニュアンスとしては「暖かい雰囲気、フレンドリー、心地良さ、幸せな気持ち、何かに属している気持ち」などのようです。

私がベルリンが特別な場所だと感じる理由のひとつは、ゲミュートリッヒカイトが街いっぱいに溢れているからではないかと思っています。皆のんきに日々を過ごしているという意味ではなく、普通で当たり前のことにちょっとした幸せを感じることができる人が多いということです。日本や北米と比べて、お金やステータスにがつがつしている人が少なく、社会的地位や金銭的裕福度で人を判断しないことも要因かもしれません。

周りに干渉されずに、それぞれが個々のスタイルを貫くことができる「自由な場所」。個人主義を尊重する社会だからこそ、あらゆるタイプの人間が共存できるコミュニティーを大切にしていきたい。そんな包容力のある価値観が、ゲミュートリッヒカイトというドイツ特有のスピリットを培っているのではないかと思います。

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